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ジャーナル
Journal

ビデオ会議による遠隔手話通訳で
耳の不自由な人にも自治体の窓口サービスを

2022.08.15

耳の不自由な人は、自治体が提供する窓口サービスの利用に二の足を踏んでいます。背景にあるのは、その場に手話通訳がいないため自分の意思を相手にうまく伝えられないという実状です。自治体は、耳の不自由な人でも気軽に窓口サービスが受けられるよう、ビデオ会議(TV会議)を使った遠隔手話通訳を導入する取り組みを進めています。


手話通訳の提供が進んでいない自治体の窓口サービス

公的な手続きを受けたいとき、健聴者なら役所の窓口に足を運べば短時間で用件を済ませられます。しかし、耳の不自由な人にとって、こうしたサービスを受けるのが難しい現状があります。
耳の不自由な人がコミュニケーションをするときには手話を使います。手話は専門技能であるため、健聴者とやり取りするときは手話通訳を介さなければなりません。いざ公的サービスを受けようと最寄りの役所や出張所に赴いても、手話のできる人がいなければうまく会話ができず目的を果たせないのです。
自治体も、何らかの施策を推し進めたいところでしょう。しかし、役所や出張所すべてに専属の手話通訳者を配属させたり、決まった日に各支所に巡回させたりするのは、財政面・業務面で大きな負担がかかります。
結局、手話通訳者を本庁の専門部署に常駐させて、そこへ足を運んでもらう以外に手立てがなく、耳の不自由な人は公的サービスを受けたくても思うように受けられないのです。

ビデオ会議システムを使った遠隔手話通訳が問題を解決

手話通訳を必要なときに窓口に派遣できる手段さえあれば、耳の不自由な人にも公的サービスを提供しやすくなります。これを実現するのが、ビデオ会議システムを使った遠隔手話通訳です。
ビデオ会議システムを使った遠隔手話通訳の仕組みはいたって簡単です。窓口にビデオ会議用のモニタを設置して、本庁あるいは外部と契約した手話通訳者と回線をつなぎ、待機状態にしておきます。手話通訳が必要になったときは呼び出しをして、窓口担当者と利用者はモニタ画面に映っている手話通訳者の助けを借りながら、お互いの意思疎通を図ります。
この遠隔手話通訳は専用機器を用意する以外、手話通訳者がその場にいて業務に従事するのとほとんど変わりません。それでありながら、運用する側にとって必要なときに手話通訳を利用でき、最小限の人件費であらゆる場所へ手話通訳者を手配できる利点をもっているのです。
地方自治体の中には、すでにこうしたシステムを導入して、耳の不自由な人へのサービス向上に取り組んでいるところもあります。たとえば、佐賀県唐津市では、本庁にあるコミュニケーション支援センターと全支所をビデオ会議システムで結んで、本庁に在籍している手話通訳者とやりとりできる体制を整えています。千葉県市原市でも、市役所本庁と南総支所との間で同様のシステムを導入して手話通訳を提供しています。

聴覚障がい者にやさしい福祉サービスを推進

遠隔手話通訳を介した窓口サービスは、聴覚に障がいのある方にも安心して公的手続きを受けられる機会を与えています。手話通訳がないとき、窓口の担当者とのやりとりは筆談しかなく、微妙なニュアンスを含んだ意思伝達をするのが困難でした。遠隔手話通訳を導入したことで窓口担当者と意思疎通しやすくなったと、好評を得ています。
ビデオ会議システムによる遠隔手話通訳は、地方自治体の窓口サービスのみならず、銀行のような公共サービスの窓口業務にも活用できます。耳の不自由な人にもやさしいサービスを提供していくとき、ビデオ会議システムによる遠隔手話通訳は大きな役割を担うでしょう。

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